トランプ勝利を織り込んだ市場、金利上昇ドル高は正しいのか?

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ここまで米国大統領選に於ける世論調査の結果では、民主党副大統領ハリス候補に対して劣勢だった共和党トランプ前大統領でしたが、今週激戦7州全てで支持率がハリス氏よりも上回ったことにより、市場ではトランプ氏の勝利を織り込む動きが見られました。
今週10年物米国債の利回りは4.09%から4.26%まで上昇し、ドル円は149.44円から153.18円まで急騰しました。

既に2週間を切った大統領選ですが、RealClearPoliticsの調査結果を見てみますと、まさにこれら7州は激戦といった感じで、トランプ、ハリス両氏の支持率の差は0.1~2.4%の差しかありません。
この7州を除いた残りの州では、確かハリス氏が7人ほどトランプ氏よりも多く選挙人を獲得する見込みとなっていたと思いますので、トランプ氏が勝つためにはこの7州で4勝3敗くらいが最低条件となりそうです。
そんな中、マイクロソフト創業者のビル・ゲイツ氏がハリス陣営に約5,000万ドルの寄付をしたことが昨日報じられました。
これがどれほどの影響力があるのかわかりませんけれども、確率は高いと思いますが、まだトランプ当確を織り込むには早いような気がします。

【激戦7州の大統領選支持率】


選挙人の数 トランプ
ハリス

ミシガン州 15
47.9 47.7 トランプ +0.2
ペンシルベニア州 19
48.0 47.5 トランプ +0.5
ウィスコンシン州 10
48.1 48.0 トランプ +0.1
アリゾナ 11
49.1 47.5 トランプ +1.6
ノースカロライナ州 16
48.3 47.8 トランプ +0.5
ジョージア 16
49.0 46.6 トランプ +2.4
ネバダ州 6
47.8 47.1 トランプ +0.7

 

そして、もしトランプ氏が勝利した場合ですが、今週動意付いた金利上昇・ドル高は正しいのでしょうか?
そう、あまのじゃくの筆者はこれにも疑問を呈したいと思います。

 

関税

まず、トランプ氏の掲げる目玉政策といえば、やはり「関税」ではないでしょうか。
トランプ氏は輸入品に対して一律10~20%、とりわけ中国からの輸入品に対しては60%もの関税を課すと公言しています。
関税は、日本では法律によって決められるため議会を通さないといけませんが、米国では大統領権限で決定することができるようですので、トランプ大統領が誕生した際には即実行が可能となるわけです。

そうなりますと、関税分の価格転嫁が起こり物価は上昇することに間違いはないでしょう。
ただ、それは関税分を価格転嫁した際の一時的なものであって、持続的に同じようなペースでインフレ率が上昇していくわけではありません。

他方で米国から関税を賦課された側の国では報復関税に動く国もあると思われ、米国の輸出産業はもちろん世界経済にとってもマイナスとなります。
一期目のトランプ政権時代には米中の貿易摩擦によって、度々リスクオフ相場になっていたことが思い出されます。

そして現在、米国の財部門はほぼデフレ状態となっており、小売業者は大幅な値引きをして消費者の財布の紐を緩めている状況です。
恐らくトランプ氏当選となった場合、関税が賦課される前に輸入業者をはじめ、卸、小売り、消費者による買い溜めや駆け込み需要が起きると思われます。
その間は特需により一時的に景気は良くなりますが、その後は需要を先取りした分、価格高騰も相まって消費は相当落ち込むのではないでしょうか。
そうなってきますと、価格転嫁がピークを過ぎた後の財価格はインフレよりもむしろデフレ気味に進行すると考えられます。

今、米国はインフレ率2%へ向けて一歩ずつ進んでいますが、トランプ関税によって5歩下がった後は大股で1歩ずつ歩みを速めるような、そんな流れになると予想します。
FRBもこの程度のことは理解していると思われ、安易に利上げへ舵を切ることはなく、せいぜい価格転嫁を終えるまでの数か月間様子を見た後、再び利下げサイクルに入るのではないでしょうかね。

 

減税

一期目のトランプ政権時代、時限的ながら法人税や個人所得税を減税する税制改革によって米国経済を大いに支えました。
二期目を目指すトランプ氏はこの時限立法を恒久的なものへ、そしてチップや社会保障給付金への課税の免除を公約に掲げています。

減税は関税と違って議会を通すため、共和党が多数派を占めるかどうかにかかってくるわけですが、トランプ氏が当選したならば、議会も共和党が勝利している可能性が高いように思います。
そうなれば、トランプ氏の主張も通りやすくなると思われ、恒久化されるかどうかは別として、とりあえずは現行の法人税率や個人所得税率は維持されると考えられます。

チップへの課税免除はハリス氏も公言しており法案は通るでしょうが、そもそもチップ収入のある接客業に従事している労働者は全体の2.5%程度と極僅かで、その多くは所得税を免除もしくは低率のため経済効果は限定的でしょう。

一方、問題となりそうなのが社会保障給付金の方です。
米国では約6700万人が社会保障給付金(年金)を受給しており、その約4割が所得税を支払っています。
社会保障給付金の財源の約4%はこの所得税収入で賄われており、これが免除されるとなると約10年後には不足すると試算されている財源が更に枯渇に向かって加速することになります。
税金で補填するようになるのかわかりませんが、実現性は低いのではないでしょうかね。

よって、減税による経済効果は現状維持+α程度で、一期目の時のようにはいかないのではないでしょうか。

他方で、関税による増収もある中で減税による財政の悪化が懸念されており、現状期間の長いものほど投機筋の空売りも含め米国債は売られやすい環境にあります。
しかしながら、基軸通貨の強みもあって、米国外からのドル・米国債への実需での需要は強く、中国が米国債の保有を減らす中、全体ではこの1年で7.6兆ドルから8.5兆ドルへと増加しており、やはり年利4~5%もの利息を享受できる金融資産は魅力なんでしょう。

したがって、米国経済が悪化していきFRBが利下げを継続していく中では、米国債の利回りがどんどん上昇していく環境にはないと考えられます。

 

その他、移民問題で支持を得ているトランプ氏ですが、不法入国対策や強制送還によって、労働力不足による賃金の上昇圧力が考えられます。
が、景気減速によってこの問題はクリアされていくことでしょう。
むしろ人口減による個人消費や住宅需要の低迷の方が問題になっていくような気がします。

また、シェールオイル・ガスなどエネルギー資源への支援によってエネルギー価格を低下させてインフレを抑制し、ひいてはこれがロシアの収入減に繋がり戦争を終わらせるとしているトランプ氏ですが、コスト増によって新たな掘削によるシェールオイル生産の採算ラインは80ドルほどとも言われており、とてもエネルギー価格が低下していくようには思えません。
なので、この件に於いてはインフレ率を押し下げる効果はないと思われます。

 

 

というわけで、コラムを書いている最中にも米国債の利回りは低下し、ドル円も下落してきていますが、筆者は大統領選直前の米国雇用統計を含め経済指標は全体的に悪化していると予想しており、またトランプ大統領が勝利したとしてもインフレ率の上昇は一時的でむしろその後はデフレ気味に推移すると予想しています。
そして、11月もしくは12月のFOMCでの金利据え置きを市場は30%ほど織り込む中、やはり経済指標の悪化によりFRBは両会合での利下げを実施すると予想します。

 

さて、トランプ支持者は経済面でハリス氏よりもトランプ氏を支持しており、多くの支持者は関税で自身の暮らしは良くなると思っているようです。
関税はステルス消費税みたいなものですから、「トランプに騙されたー」ってならなきゃいいんですけどね。
4年後はトランプ関税を撤廃することを公約にした候補者が大統領になってるような気がします。(笑)

 

ちなみに、管理人ペッパーは経済・金融の専門家でもなんでもありません。
信じるか信じないかはあなた次第!
ฅ(=^・^=)

 

*冒頭選挙人の数等一部修正しました。

Posted by ペッパー