先手を打った日銀植田総裁、後手に回る選択を自らしたFRBパウエル議長、今後の物価・経済の行方は?

コラム,FOMC,日銀金融政策決定会合

先週、日米の金融政策を決める会合がありました。
まずは米国側の7月26日(水)にあった7月FOMC(連邦公開市場委員会)の結果発表とパウエルFRB議長の会見を取り上げたいと思います。

2月の会見でパウエルFRB議長は「利上げを停止後に再開する選択肢は検討していない」と発言していましたが、大方の予想通り0.25ポイントの利上げを実施し、政策金利(FFレート)を5.25-5.50%へと引き上げました。

3月4日の段階で筆者が予想していた通り、やはり「FRBは利上げ停止後に、再び利上げに追い込まれる」ことになりましたね。

❝筆者は7月頃から米国CPI(前年同月比)の上昇を予想しているので、パウエルFRB議長は利上げ停止後は再利上げしないと言っていましたが、恐らく再利上げに追い込まれることになるとも同時に予想しておきます。❞

しかしながら、その後のパウエルFRB議長の会見で、ほんの1か月前の6月FOMCでは「2回の利上げは適切」と言っておきながら、今回7月のFOMCでは「今後の利上げはデータ次第」、つまり「データによっては2回の利上げは不適切」と、今度は一転してハト派的な発言によって、米国債利回りとドル円は急落することとなりました。

まさに「利上げすれども金融引き締まらず」、案の定またやらかしてしまったかパウエル議長…といった感じでしたね。

7月12日のコラムでは、米国CPI(前年同月比)が3.0%まで下落したのを受けて、

❝市場は「2%までもうすぐじゃん!」なんて思って、ドル売りになるかもしれません(笑)
FRBも「もうコレ利上げしなくていいんじゃね?」なんて思ったりはしないと思いますが…(笑)❞

と、半分冗談で言ってたのですが、FRBも「ヒャッハー!」ってなってしまいました…。

パウエルFRB議長は「今後の利上げはデータ次第」としていましたが、市場も専門家も今回の利上げを最後とする予想が多くなり、「CMEのFedWatch ツール」を見ますと、利上げの織り込み度は11月FOMCの時が最高で、約30%ほどとなっています。

【CMEのFedWatch ツール】
CMEのFedWatch ツール


そこで、あまのじゃくの筆者としては、やはり市場や専門家の大方の予想とは反対の「更に利上げする」としておきます。

その根拠として、まずは筆者はインフレ第二波を予想していること。
前回のコラムでも述べましたが、Inflation Nowcasting の予測値を見ますと、7、8月のインフレ率は6月から上昇しています。
しかも、思ってた以上に上昇しています。
インフレ第二波は、ほぼ100%発生するでしょうから、問題はいつまで、そしてどこまで上がるのか?ということでしょうね。

右 これはヤバい!米国インフレ急加速!Nowcastingの8月米国CPI予測値は前月比で0.64%、年率換算で7.96%!

 

2つ目は、FRBが金融政策をデータ次第としていること。
「データ次第」という言葉は、まさに逃げの言葉です。
インフレ率の上昇を予想してYCCの変更を先手を打って実施した植田日銀総裁とは真逆で、自分たちで経済や物価の予想ができないと言っているようなものです。

インフレ率が低下する下りのターンでは、たとえFOMCで利上げを見送ったとしても自然にインフレは鈍化していきます。
しかしながら、インフレ率が上昇する上りのターンでは、データを待っていてはその間インフレはどんどん加速していってしまいます。
しかも、パウエルFRB議長は緩やかなペースで利上げすると言っていたので、次回9月のFOMCでは利上げを見送る可能性が高そうです。

今回のこのインフレ第一波も2020年5月を底に6月から既にインフレ率は上昇していたのですが、パウエルFRB議長は「インフレは一時的」と言って、約2年後の2022年3月に、CPI(消費者物価指数)が前年同月比で8.5%となったところで、ようやく0.25ポイントの利上げに踏み切りました。
やはり後手後手に回ってしまいますと、政策金利はより高く、そしてより長く維持しなければならなくなるでしょう。

【米国の政策金利とCPI(前年同月比)】
米国の政策金利とCPI(前年同月比)



しかしながら、米国、或いは世界の救世主となるか破壊神となるか、その2日後に植田日銀総裁がやってくれました。

次は、日本側の日銀金融政策決定会合ですが、現在10年物国債の利回りを0±0.5%内に収まるようコントロールしているYCC(イールドカーブコントロール)を0±1%へと変動幅を拡げる変更を行いました。
市場や専門家の多くは、「金融政策の変更なし」を予想していたため、大きなサプライズとなって国債利回りは急上昇し、ドル円や日本株は急降下する荒れ相場となりました。

ただ、事前にYCC修正に関する報道がなされていたこともあり、国債利回りはさすがに上昇したままとなりましたが、株やドル円などの為替相場は下落分をほぼ帳消しにする動きとなりました。
恐らく、会合当日にYCC修正の発表をいきなりしてしまうと相場が暴落してしまう可能性があったので、深夜2時にWEB版を更新する日経新聞に日銀自らリークしたのでしょう。
投機筋に国債の仕掛け売りの時間を与えないために、欧州勢がほぼ取引を終え、日銀金融政策決定会合の結果を発表するまで残り僅か10時間というタイミングで記事が掲載されました。
なかなかやるな~といった感じで、日銀のしたたかな戦略でしたね。

想像するに、植田総裁が今会合でYCC柔軟化を決意したのは、ほんの数週間前だと思います。
恐らく、原油価格などコモディティが6月末より急上昇してきているのをみて、短期的にまたインフレ率が上昇し、上限を0.5%で厳格に維持するのはもはや不可能と感じ取ったのでしょう。
それならばと、投機筋からの圧力を受ける前に先手を打って、上限の厳格化を柔軟化させるという僅かな修正で、まんまと投機筋を出し抜いたのです。

筆者もYCCの変更はサプライズ気味に行うだろうと予想して4月の段階で記事に書いていましたが、もう少し先の米国が利上げを打ち止めする頃だと思っていました。

右 来週のFX外国為替相場予想(2023年4月24日~ ドル円)米国経済指標良好で上昇

インフレ率2%の目標を達成するためには、植田総裁は経済を最優先してくると思い込んでいましたが、会見を聞いた感じでは副作用の方をより嫌っていた感じですね。
ただ、やはり上述の4月の記事の通り、10年物国債の利回りは軽く0.5%を突破してしまい、現在は0.6%台半ばまで上昇してきています。

イールドカーブを見てみますと、10年物のところで少し凹んでおり、上値余地は多少ありそうな感じはしますが、現状では0.6~0.7%くらいがほぼ適正水準かなという気がします。
そして、今回のYCC柔軟化では、国債の利回りは市場に任せるというやり方、しかも0.5%を超えたところでは、その市場に日銀も買いで参戦するということなので、植田総裁も会見で述べていた通り、10年物国債の利回りが上限の1%に接近、定着するということは当面なさそうです。

つまり、0.6~0.7%くらいが日本側からの日米金利差を縮められる限界点ということになりそうで、ドル安円高になるためには米国側の国債利回り低下が条件となりそうです。

【日本国債イールドカーブ(8月2日時点)】
日本国債イールドカーブ(8月2日時点)

 

そして、その米国債の利回りですが、YCCの柔軟化で日本国債利回りの上昇とともに連れ高となりました。
日本の投資マネーが米国債から日本国債へ逆流する、或いは新たな米国債への投資が減少する、といった思惑で米国債は売られて利回りは跳ね上がりました。
10年物や30年物などの長期・超長期債の利回りは4%を超えてなかなか定着することはなかったのですが、このラインをあっさり突破し、大手格付け会社フィッチの米国債格下げなどもあって現在も4%台をキープしています。

そう、筆者は住宅需要を減衰させるためには、住宅ローン利率7%が必要、そのためには30年物米国債の利回りは4%強必要だと言ってきました。
FRBがどれだけ利上げしようがなかなかできなかったことを、日銀が利上げするまでもなく簡単にやってのけました(笑)
日銀が米国の金融を引き締めたのです。
恐るべし日銀パワーといった感じですね。

したがって、米国のインフレは既に第二波に突入していると思われますが、徐々に収まっていくでしょうね。
そして現在、市場も専門家も、そしてFRBも総楽観となっていますが、ここでもまた筆者のあまのじゃく予想としては、経済はむしろ早めにリセッション(景気後退)入りすると予想しておきます。

今年3月のシリコンバレー銀行破綻直後には、専門家のほぼ100%が今年の米国のリセッション入りを予想していましたが、あまのじゃくの筆者としてはこれにも反対の予想をして今年のリセッション入りはないとしていました。

右 シリコンバレー銀行破綻でむしろ米景気良化インフレ加速、リセッションも今年はない!?

リセッションは様々な要素で総合的に判断されるのですが、失業率が直近低値から0.5ポイント上昇したところをリセッションの入口とすると、来年早々には失業率は3.9%まで上昇し、その直後に実質GDPは2期連続マイナス成長となり、米国はリセッションになると予想しておきます。(もしかしたら今年末にも!?)

【米国失業率と実質GDP】
米国失業率と実質GDP

 

ちなみに、管理人ペッパーは経済・金融の専門家でもなんでもありません。
信じるか信じないかはあなた次第!
ฅ(=^・^=)

Posted by ペッパー